
Q.息子 A. マスター
Q.命の軽薄さを少しでも和らげるためにできる教育とは何か、教えてください。
A.教育は絶大な力を持っています。それは、いい意味でも。悪い意味でも。
それは、あなたもよく知っていることだと思います。
そして、今の道徳観の中で、私たちは命は尊いものであり、自分の命を大切にし、他者の命を
決して害してはならないと教わっていますね。
しかし、表面的な理解を感覚的に十分に理解するためには、3つのカリキュラムを経る必要があります。
Q.3つのカリキュラムですか!それは一体、何ですか?
A.それは、『自然と命』、『種と命』、『食と命』の3つです。それぞれ説明していきましょう。
まずは『自然と命』です。
自然は命の土台です。私たちは、自然に生かされています。海や大地、水、植物、動物、
それらすべてが循環していて、その中で私たちは生きられているということを、身をもって
感じるのです。命にとって、自然はかけがえのないものです。切っても切れない存在です。
自然を壊すことは、命を壊すことだと理解することです。
海を汚せば、それが雨となり、そして、私たちが生きる土壌を汚すことを知るでしょう。
そして、この地球がいかに奇跡的に成り立っているのかを教えてあげてください。
この段階では、あまりに分離してしまった命と自然の結びつきを修復することが目的です。
次に『種と命』です。
それは、私たちが人間という種として、脈々と命を継承していることを知ることです。
あなたが親から生まれ、親は祖父母からと。その長い長い繋がりの中に、あなたがいる
ということを自覚することです。そしてそれはあなたの子、そして孫・・・と。
また、長い長い繋がりが生まれていくことを自覚するのです。
先にも言いましたが、私たちはこの命の連鎖を感じる機会を失っていきました。
そうすると、私たちは、自分だけの力で存在し得ていると考えてしまうようになります。
それは身勝手な行動につながるのです。他者に対してだけではありません。
子孫に対しても身勝手になってしまいます。自覚を持つことで、次に命をつないでいくこと
に責任が生まれる。
だから、種として、先祖から引き継いだように、私たちがまた、引き継ぐのだという自覚を
持つことが必要なのです。
最後に『食と命』です。私たちは生命を維持、そして繋ぐために、命をいただいています。
今では、分業と技術の発展で、私たちが命を食べているという認識が薄れてきているでしょう。
食べ物はただ買うモノ、になってしまいましたから。そして、そこで育つ子供たちは知識として
知っているだけで、実感のないままで終わります。食べ物はただの無機質なものに変わりないと
感じてしまう。それでは命への思いが希薄になってしまう。
私たちが命を食べて、日々、命を繋いでいると実感できたとき、自然と私たちの自身の命の重み
に対する理解が芽生えてきます。
この3つの段階を踏んではじめて『命を大切にしなさい。』の真意が伝わります。
ただ、言葉だけで伝えて『はい、理解しました。』というのは、まるで機械のようでは
ありませんか?私たちは言葉と、それ以上にその身で実感することを望んでいます。
その中で様々な気づきや発見を得られるのが私たち人間なのです。
それを忘れずにいてください。