息子とマスターとの対話4

Q.息子 A.マスター

Q.なるほど!ええ、わかります。私としてはとても腑に落ちる話でした。
 この3つの段階を踏んで、初めて命の教育となるわけですね。
 ただ、一つ思うことがあるのです。特に、『自然と命』について、思うのです。
 私たちの文明が発展したわけです。それはもう、随分と。しかし、その文明は
 やはり、自然を犠牲にして成り立っている。私としては、工学技術に魅入られたものとして(息子は
大学でロボット工学やAIを学んでいる大学生でした。)否定したい気持ちはあります。
 しかしあまりに自然を尊ぶのは、文明を破壊しろということになりませんか?時代が逆行するような。

A.そうではありません。文明や技術の発展は素晴らしいことです。
 ですが、それは文明の解釈が違うのです。
 あなたの言う『自然を壊す文明』というのは、エゴの上に成り立っています。
 物質的な欲求です。モノに溢れかえった世界です。
 本当の文明は対極に位置します。
 文明が発展するといううことは、コンパクトに必要なものが削られていくことを意味します。
 より、シンプルに、機能的になるのです。
 かける時間や、必要なモノが無くなっていきます。

Q.より、シンプルに、機能的にですか!確かに。技術進歩に強烈に驚いたあの頃は、多忙や雑多な
 世界を求めていたわけではなかったはずですよね。・・・。言われてみれば、よりシンプルで
 機能的というフレーズはしっくりときます。

A.ええ、きっとそう思う人も多いでしょう。では、どうして雑多に、かつ非機能的になってしまったのでしょうか?
 例えば一つは、お金の仕組みがそうさせているとも言えます。お金は、少しでも多く持ちたいと願ってしまう
 わけです。そのためには、たくさんのモノを売ればいい。
 同じようなこのをたくさん買ってもらうのです。その視点で見れば、シンプルさも、機能性も2の次で
 同じモノがどんどん増えていく。もちろん、若干の違いや見た目が違っています。
 それが、物欲を掻き立て、私たちも同じモノをいくつも買いますね。
 そうして、物質的で雑多な文明が広がっていきます。

Q.なるほど、その仕組みは理解できました。ただ、もう取り返しのつかないところまで
 来ているわけですからね。今の文明では、どう考えても自然破壊を助長するだけです。

A.そうですね。ですが、この話を聞いたあなたが、シンプルで機能的な文明を理解し、
 例えばシンプルで機能的を体現したとしたら・・・。例えば、それを求める人が一人、
 また一人と増えていったら・・・。それは大きな進歩と言えますね。

Q.ふふ。確かにそうですね。まあ、頑張る所存ですよ。そのうえで、最後にお聞きしたいのが、
 私たちの物欲は一体どうして芽生えてしまったのですか?

A.それはいろいろな囚われが影響しています。
 例えば、承認欲求だったり、不安などが衝動的な物欲に変わったり。
 では、根源的に発生した理由は何かと聞かれれば・・・。
 一つに競争の精神によるものでしょう。

Q.競争ですか。それは人間の性質ともいえるものなのでしょうか。

A.いえ。それは蓄えることを知ったことが発端でした。
 私たちは物質的なモノを蓄えるということを学びました。
 それまでは、そこに大きな優劣感情はありませんでしたが、
 蓄えるという行為によって、そこに優劣が生じました。
 あっちよりは多く蓄えているぞ、でも向こうより、少ない。
 そういったことが、競争の始まりです。
 その精神が、どんどん競い合いになり、その結果、私たちは
 足ることを忘れてしまったのです。
 競い合いの中で、満足することがなくなり、欲求は際限なく積もるようになりました。
 しかし、間違えて欲しくありませんが、決して蓄えるということをするなという意味では
 ありません。確かにそれは、発端ではありましたが、今、私たちはそれを知ったのです。
 そうであれば、蓄えることをしながらも、競争の精神に打ち勝つことができます。
それは大きな躍進です。
 そうして経験と成長を繰り返すことこそ、私たちの目的であるのですから。

息子とマスターとの対話5つづく

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